「ありがとうございます。
 あの……
 昨夜はご迷惑をお掛けしたようで、申し訳
 ありません」

私はお礼と謝罪をして、用意された薬を口に含んだ。

私は、それを水と共に飲み下すと、姿勢を正して言った。

「このお礼は、また改めてさせて
 いただきます。
 お邪魔して申し訳ありませんでした。
 すぐにお(いとま)致しますので…… 」

私は出来るだけ丁寧に挨拶をし、ベッドから下りようとした。

すると、彼は、ベッドに腰掛ける形になった私の隣に座り、肩を抱いた。

えっ!?
何、これ!?
どうしよう……

うろたえる私にはお構いなしで、彼は言った。

「夫婦の間でお礼なんていらないし、邪魔だ
 なんて全然思ってない。
 だいたい、昨日から、莉緒んちはここ
 なのに、どこにお暇する気でいるんだ?」

へ!?

私が隣に座る彼の顔を呆然と見上げると、彼は唇の端をニヤリと上げて笑った。

「どうせ、何も覚えてないんだろ」


……その通りでごさいます。

その通りなんだけど、なんだか今、聞き捨てならない大変なことを言われた気がする。

彼は、私の肩から手を下ろすと、立ち上がってまた隣の部屋へと向かった。

戻った彼の手にあるのは、昨日、私が買った結婚情報誌が入った書店の紙袋。

彼から手渡されたそれは、昨日は封をしてあったテープが剥がされ、開いていた。

「中を見てみろ」

また隣に腰を下ろしながら、彼は言う。

私は、よく分からないながらも、言われるままに中から結婚情報誌を取り出した。

けれど、昨日買った時は付録のポーチが落ちないようにビニール袋に入っていたのに、取り出されて袋はなくなっている。

そう、このおしゃれなポーチも欲しくてこの本を買ったんだった。

私は、紙袋を傍に置き、その上に雑誌を置くと、欲しかったポーチを手に取った。