当たり障りのない今日の出来事なんかを話しながら、カクテルを3杯ほど飲んだところで、俊が話し始めた。

「莉緒、ごめん… 」

「ん? 何が?」

「他に好きな人ができた」

「えっ?」

嘘でしょ?

「別れてほしいんだ」

「なん…で?」

「莉緒は悪くない。
 俺が全部悪いんだ」

「だから、なんで?
 相手は?」

「……同じ部署の子。
 ほんと、ごめん」

「いつから?」

「分からない。
 気付いたら、気になってて… 」

「いやだって言ったら?」

「……莉緒は言わないと思う」

は!?

「なんで?」

「莉緒は、俺なんかよりずっと大人だから、
 気持ちが離れた男にみっともなく縋ったり
 しないだろ?」

違うよ…
私だって、俊に甘えたかった。
だけど、俊が私を年上扱いして甘えてくるから、しっかりして見せてただけ。

「じゃ、俺、もう帰るわ」

そう言い残して帰っていく俊を引き止めることもできず、私はただ呆然と彼の背中を見送っていた。

けれど……







ん?

帰る?

どこへ?

っていうか、私はどこへ帰ればいいの?

彼が去って、いいほど経ってからようやく、事態の深刻さに気付いた。

別れた男の所へ帰る?

それって、なんか間抜けじゃない?

かと言って、他に行くあてがあるわけでもない。

「すみません。
 スクリュードライバーください」

もう、なるようになれ。

私はヤケ酒を決め込んだ。