しかし、どうやって切り出していいのやら…
リコは忘れたいかもしれないから、キョウスケの名前を無神経に出すわけにもいかず
そんな気遣いに気づいていないのか、或は空元気なのだろうかリコはいつも以上にハイテンションに思えた。
リコときれいなケーキを買ってエリナのお家を訪ねると、きれいなエリナママが出迎えてくれた。
「エリナね、今日はちょっと調子がいいみたい。二人が遊びにきてくれるって嬉しそうにしてたの」とエリナママは階上を不安そうに見上げる。
「…ねぇ、エリナが何でああなっちゃったのか、あなたたちは知ってる?エリナから何か聞いてる…?」とエリナママが声を潜めて、あたしとリコは思わず顔を合わせた。
「…い…いえ」と答えるのが精一杯。
まさか自分の娘がガールズバーで働いていて、そいでもって淫行コーチに目を付けられて、関係を強要されて、しかもそいつがストーカー化してるとは…
言えねぇ。
いかにも優しそうだし、おっとりしてるから聞いたらぶっ倒れるかもしれねぇ。
あたしたちはそそくさとエリナのお部屋に向かった。
エリナは、エリナママが言った通り今日はちょっとだけ調子が良さそうで、顏色もいい。笑顔であたしたちを迎え入れてくれた。
「今日はね~二人が来てくれるから久しぶりにメイクしたの♪」エリナは楽しそうで、ちょっとほっ。
「あ、可愛い~♪ね、そのチークどこで買ったの?」とすぐにリコが食いつき
「これ?前に買ったのだけど、結構気に入ってるんだ~」
「きれいなピンク。あたしも欲しいな~
ね、朔羅帰りにドラッグストア行かない?」と聞かれ
「う、うん!」と慌てて頷く。
どうやら決戦は間近だ。
ぅう゛ぅ~!!
どっからか、ほら貝の音が聞こえてきて、あたしの背後で嵐が巻き起こった。
「いざ!出陣!!」
てな具合に。