それは、数分前。
口紅だらけの顔を、母親のクレンジングを借りて落とし。
口紅だらけになったシャツを着替えて、再び支度を終えて、家を出る時だった。
相当なタイムロスとなり遅刻しそうなため、今日は忠晴に車で学校まで送ってもらう。
『…伶士!おまえが危ない!今日は学校を休め!休むんだぁぁぁっ!』
『は?…は?』
『伶士、恐らくおまえは呪われている…!』
(………)
『…は、はぁっ?!の、呪い?!』
『そうだ!そうなんだぁぁっ!…この呪いの正体がわからぬうちは、家から一歩も出てはならん!』
は…。
『くっだらねぇ…俺、学校行くわ。放課後部活出たいし』
そう言って、親父を撒いて忠晴にさっさと車を出して貰った。
「…電話こねえし、大丈夫なんじゃね?」
手にしているスマホには、親父からの着信はない。
あんな剣幕で、学校に行くなぁぁっ!って言ってたのに、連れ戻すコールが無いということは、別にいいんだよ。きっと。
赤信号で、車は停まる。
ルームミラー越しに、忠晴と目が合った。
「…では、伶士さま。先ほどの現象をどうお考えになるつもりで…?」