「…ん?…ん?」
辺りをキョロキョロと見回す。
すると、また聞こえた。
《…私を!…愛して!》
今度は、はっきりと。
耳元で怒鳴られているかのように、大きく。
「…うわっ!」
突然耳元で怒鳴られてびっくりしてしまい、体を震わせ思わず声を上げてしまう。
同時に何かに口を塞がれ、グイッと後ろに引っ張られた。
顔や胸元にドンッ!と衝撃が走って、息が詰まる。
(…うっ!)
その勢いで後ろに引っくり返され、視界がぐるっと変わって真っ暗になった。
視界暗闇の中、体をバン!と叩きつけられて、全身に一気に痛みが走る。
「…いっ…痛っ…」
「伶士さま?!」
「伶士!」
椅子がガタッと鳴る音、足音がバタバタと聞こえて響く。
痛みが取れないまま、体を起こせずそのまま踞ってしまう。
何なんだ?今のは…!
呼吸が解放されて、小刻みに息をきらす。
ようやく体を動かして、起き上がる。
うっすらと開けた視界の向こうには…父や母、忠晴が一斉に俺の顔を覗き込んでいるのがわかった。
心配そうに…。