突然のオファーに一瞬固まると、忠晴は更に小声で凄んでくる。
「なずなさんにはお世話になっているでしょう…日頃の感謝を込めて、男を見せてください…」
「………」
ラテアートで男を見せる…?
全然、男らしくないよ…。
しかし、忠晴の凄みの勢いに圧倒され、しぶしぶとラテアートのスティックを受け取る。
やれやれ。
(日頃の感謝、か…)
「おっ?何かするの?何するの?」
「………」
俺がスティックを持ってカップに向かう様子を見て、なずなはワクワクした声をあげる。
そんなに期待されるとプレッシャーになるし。
…照れるだろ。
恥ずかしくなってしまい、勢いでラテの表面にスティックを素早く滑らす。
ひょいひょいと水面キャンバスに描いてやった絵は…花の絵。
なずなのイメージと言ったら、花かな。なんて。
ついでにアルファベットで名前も入れてやる。『Nazuna』なんて。
「おおぉぉ!すごい!すごいぃぃ!…伶士ってカフェの店員だったの?」
「違う。家庭科の時間にラテアートの授業あるんだよ」
「セレブ学園の?すごいカリキュラムだな」