登場早々母さんに怒鳴っている。
まあ、血相変えて飛び込んできた様子だったから、余程焦っていたんだろうけど。
そんは二人のもとへ、菩提さんが赴く。
「…奥様、ひとつお聞きしたいのですが」
「ええ、何でしょうか」
「なぜ、奥様はここに入って来ることが出来たのですか?」
母さんは首を傾げて、少し考えている。
「…私は、伶士のお母さんです。母には息子を守る義務があります」
「いえ、そうではなくて」
母さん、菩提さんにバッサリと斬られた。
それもそのはず。質問は『なぜ入った』のではなく、『どうやって入った』だから、母さんの軽いボケだ。
菩提さんには苦笑いされてるし、親父からは冷たい視線を送られている。
「…このホール内には、結界を張って外部との行き来を断っていましたので、奥様が簡単に入ってくることは…」
「…あ、あぁ、それね?」
質問の意味がわかったのか、母さんはフフッと笑う。
「それはね?…『あの人』が行け!って言ってくれたの」
「へ…?」
「息子を守るために行け!って、中に入れてくれた…んだと思う」
「…そうですか」
菩提さんは妙に納得している。
親父は「なんだそれは…」と、ため息をついていた。