声が裏返るほど、無我夢中で叫んでいた。
「…あなたがちゃんと前を向いていけるように、喧嘩すればよかった!…ごめんなさい!…ごめんなさい!」
喧嘩するだなんて母さんが?…どんな天変地異だ。こんな弱々しい人、絶対負ける。
…ではない。
「母さん!…離れて!吹き飛ばされる!」
「…倫子さん!ごめんなさい!…ごめんなさい!」
喚く母さんを無理矢理引っ張って連行する。
ったく、何なんだよ。
…けど、いろいろ思いが駆け巡るものなんだ。
譲れないモノと理屈では言い表せない何かが。
母さんにも、倫子さんにも。
親父にも。
…親父はクソヤローだけどな。
喚く母さんを腕に抱えて、光と風に包まれた彼女を見上げる。
光は更に輝きを増して、姿が消えそうだ。
…しかし。
消える直前に、彼女はこっちを見つめて。
…笑った。
口を動かしていたが、風の吹き荒れる音に消されて聞こえなかったけど…。
「…ナウマク・サンマンダ・ポダナン・ギャキ・サラバビギナン…」
なずなの声に反応するかのように、神々しい光は風をも巻き込んで、更に輝きを増していく。
「…オン・キンナラ・ソワカ…」