そして、再び正面を向き、泣き崩れている鹿畑倫子さんを見る。
「…さあ、逝くぞ」
なずなは指を複雑に絡めて印を造り出す。
「…来世では、きっと気付ける。求めていたものに」
《…ああぁぁ…》
すると、菩提さんが目線を俺達の方に移して話す。
「…妖化が解け、浄霊に成功しました。本人の同意も取れたと判断して、これから霊界への道を開け、成仏致します」
「成仏…」
「本来でしたら死後間もないので、まだこの世に留めておくものですが、妖化してしまったため、取り敢えず早急に霊界へ送ることとなります」
成仏…。
…そうか。
生を終えた彼女は、これから成仏する。
「…この者、禍に憑かれ果てた者なりけり…願わくば、その浄土への道を開門せよ…」
彼女が…フワリとした優しい黄金の光に包まれる。
風が立ち起こり、光に乗せて宙へと浮かんで行く。
「…ナウマク・サンマンダ・ポダナン・ギャキ・サラバビギナン・ソワカ…」
霊界だの成仏だの、意味はよくわからないけど。
彼女を救うことが、出来た…のだろうか。