「なずな。伶士くんは偶然にもなずなと同じ高校に通ってるんだよ。…知らない?」
ここで菩提さんは俺が最も懸念していたことを、早速鈴代なずなに吹っ掛ける。
胸がドキドキッと動揺を誘う。
すると、鈴代なずなは俺の顔をチラッと見た。
「あー…」
そして、頭をそっと掻いている。
「えーと…あ、あぁ。7組のイケメンだ。みんなカッコいいって騒いでるヤツ。やたらとまつ毛長くて多いヤツ。まつ毛くんだ。えーと名前…」
「橘伶士くんだ。ヤツとか言うな。失礼だ。橘社長の大切なご子息なんだ」
「あー社長?…はい。うん。わかりました」
「………」
まつ毛くん…。
…何だか。
さぞ、興味のないような態度だ。
何ともコメントし難い。
いいんだか、悪いんだか。
「なずな、わかってると思うけど、この依頼に関しては一切口外するな。わかったか」
「はいはい。わかってるよ。っつーか、喋る人いないでしょ」
「わかってるならいい」
…身分のことも、後で口止めしておかねばならないな。