「伶士、ごめんね…お父さんや母さんの問題なのに、巻き込んでしまって…ごめんね、ごめんね…」

「………」



何度も謝ってくる母さん、俺の腕を掴む手が震えていた。

親父と母さんの問題?

母さんは、被害者なのに…。



でも…母さんは知っていたんだ。

鹿畑倫子さん、愛人の存在を。



その時、なずなと目が合う。

目で「ここから離れろ!」と言われているような気がして、元居た場所へと母さんを引っ張って連れていく。



俺たちが離れたのを見送って、なずなは手元の蓮華曼陀羅陣をトンと軽く押した。

すると、いつもよりサイズの大きいピンクのガラスは光を発して一気に押し進む。

無数の手たちをも巻き込んで、距離が離れたところで爆発した。

爆発音と共に、妖怪の悲鳴も聞こえている。



《…あああぁぁぁっ!》



…え?



その悲鳴の変化に気付かされる。



あの、おぞましく耳障りな雄叫び…ではない?

普通の女性の声の悲鳴…?