どこなんだ?
お願いだ。
聞こえるように。
この耳に、ちゃんと入るように。
俺の名前を、ちゃんと呼んでくれ。
《…伶士?》
聞こえた。
聞こえてるよ。
(どこ…?)
《…伶士!》
はっきりと聞こえた呼名に、目を大きく見開く。
(…なずな?)
その声は、なずななのか?
俺がここにいるって…わかるのか?
(どこ…)
なずな…俺。
真っ暗で、何も見えないんだ。
どこにいるのか、わからない。
俺のいる世界は、真っ暗だ。
おまえは、どこ…?
《伶士、大丈夫だよ》
大丈夫…?
(どこ?…どこなんだ?)
声は聞こえるのに、どこから聞こえるのかわからないんだ。
(見えない…見えないんだ)
もう一度。
名前を、ちゃんと呼んで…。
《伶士には…見えるんだよ?今ちょっと見えなくなってるだけ…》
俺に、見えるのか…?
《ちゃんと見て…》
(なずな…どこ?)
どこにいるんだ?
ここ、気持ち悪いんだよ。
居心地も悪くて。
早く、早く脱け出したいんだ。
「な…ずな…」
「私はここにいるじゃない」