(…誰?)
しかし、顔がよく見えない。
距離と暗さで、誰か判別するのは難しい。
しかし、ずっと見られているのも何か気持ち悪いので、思わず声をかけてしまう。
「…すみません!どちら様ですか?」
すると、男性は驚いた顔をした。
…ような気がする。
《…君、ここで僕に話し掛けることが出来るんだ…?》
は?
それは、どういう…。
すると、その男性はニヤリと笑った。
…ような気がする。
《…また、会えるよ…?》
男性がそう口にした途端。
風が音をあげて立ち込める。
(…わっ!)
それは、徐々に竜巻のように強く立ち上っていった。
風が止み、辺りに再び静寂が訪れると。
黒い羽根が無数に辺りを舞っている。
黒い、羽根…。
(黒い、羽根…)
漆黒の海から、徐々に視界が開けてくる。
恐る恐ると目を開けると、そこはまたしても見慣れた天井だった。
あれ…俺、寝て…。
しかし、そこは日差しが射し込んでいた明るい昼間ではなく。
カーテンが閉めきられた薄暗い部屋だった。