「名前、何と読むんですか…」

「ぼだいです。ぼだいつるぎ」

「あ、すみません…」

「まあ、立ったままでいるのも何だから、どうぞ座って座って」

「は、はい」



柔らかい笑顔を向けられて、着席を勧められる。

話し方も柔らかくて優しい感じがする。

そんな彼の言われるがままに、向かいの椅子に座ってしまった。

頭が混乱してるのか、今聞かなくても良い質問をしてしまった…。



「お父さんにはいつもお世話になってます、伶士くん。早速話を進めようと思うんだけど、話聞いてもいいかな?」

「あ、はい。よろしくお願いします」



…こうして、俺はこの陰陽事務所の代表さんと話をすることとなる。



「…とは言っても、実は話は大体お父さんから聞いています。午前中に御宅にお邪魔しまして、現場調査もしてきてるんだ」



…親父?現場調査?



呆気に取られていると、彼は目の前に置いてあったタブレット端末を手にして、慣れた手つきで画面をタッチしている。

陰陽師がタブレット端末…?

お祓いをする、いわば霊能力者みたいな人が、随分と近代的なものを使いこなしてるんだな。