…だなんて。
この状況で、そんなはずはない。
「…おまえが私のクライアントである以上、何があっても私はおまえを守るって言ったろ!」
力押し筋肉勝負、あっちが少し優勢なのか。
なずなの体勢が崩れてきている。
身体だけじゃない。
心も価値観も、大切にしてるもの…。
「…全てを護り通しますって、私は言ったよ!…女に二言はない!」
全てを…護り通します。
それは、俺達の約束だ。
「…わかった!」
なずなから離れ、言われたとおりに、素早くおてもとを拾い上げて、走って距離を離す。
10メートルは離れたところで振り返ると、さっきまで間近にいたその光景を確認出来る。
遠くから見ると…デカい。
バケモノの手、デカすぎて。
なずなが豆粒のように小さく見える。
こんなに…デカかったか?
どんどん大きくなっているような。
なずながチラッと振り返ってこっちを見る。
「離れたな…よし!」
俺が安全な場所まで辿り着いたことを確認したのか?
どこまでも、護ろうとしてくれるんだな。