あちらさんも、手の平ベタッとガラスに押し付けていて、こっちの方へとグッと力を加えている。

バケモノの手がグッと霊気の盾であるガラスを押すと、体勢の悪いなずなはグラッと揺れる。

しかし、倒れてしまったら終わり。

「…くっ!」

倒れないように、必死で持ちこたえていた。



「…伶士」



ガラスの押し合いという、またしても筋肉番組状態となっている最中。

力技を何とか持ちこたえているなずなは、俺を呼んだ。



「な…何だ?」

「…今のうちに逃げろ」

「に、逃げる?!」

「そこのおてもと拾って、ここから離れろ。ここにいたら巻き添えをくらう」

「え?…で、でも!」



逃げる…?



(………)



なぜか?その言葉に躊躇してしまう。



…いやいや。

これは、バケモノバトル。

何の力も持ち合わせていない俺は、ただ逃げるしかない。

護られて、逃げる…しかないんだ。



でも…。



「…伶士、早く!でももへったくれもない!…おまえを傷付けるワケにはいかないんだよ!」




それは、減俸回避のためですか。




蓮華曼陀羅陣のショート音がパチパチと鳴っている。