もう、ダメだ…!
そう感じてしまい、顔を背けて目をグッとつぶってしまう。
「伶士に触るなぁぁっ!…ナウマク・サンマンダ・ボダナン!マカ・ナーラ・ア・ビラ・ウンケン・ソワカ!ーー蓮華、曼陀羅陣っ!!」
傍でガキィーン!と、鋭い音が鳴る。
耳の奥が痛むほど響く、貫くような音が。
何の…音?
恐る恐ると目を開けると、すぐ目の前には、なずなの背中。
そして、物凄い至近距離に、霊気の盾である…ピンクのガラス。
透き通っていて、キラキラと光っている。
「なずな…!」
低くしゃがんで、片膝を突きながらも。
なずなは、俺を背に庇っている。
あのピンクのガラス、蓮華曼陀羅陣を両方の手の平で前に押し付けている。
恐らく、間一髪でなずなが間に入った。
あの距離から、ここに間に合うって…どんだけ速いんだ?!
さっきの鋭い音は、バケモノの手とこの蓮華曼陀羅陣がぶち当たった音?
「くっ…ふんぬっ!」
ガラスを押すなずなの腕は、ぷるぷるいっている。
ガラスの向こうには、あのバケモノの手の平が透けて見えていた。