「こんばんは」
「…あ、こんばんはっ!お世話になります!」
心の準備もなしに急に挨拶をされて、慌てて頭を下げた。
目の前に名刺が差し出される。
「橘建設の顧問陰陽師をやらせて頂いてます。音宮陰陽事務所の菩提です」
音宮陰陽事務所…?
陰陽師、事務所構えてんの?
(音宮…?)
受け取った名刺の真ん中には、《代表・菩提剣軌》と書かれていた。
陰陽師…名刺、持ってんの?
っていうか。
この人が陰陽師…?
想像していたのとは、全然違う。
陰陽師というので、てっきり髭の長いツルッパゲのおじいちゃん坊主が来るのかと思いきや。
もしくは、神主さんや巫女さんが来るのかと思いきや。
目の前にいる代表さんは、若いイケメンのお兄ちゃんだ。
バックサイドを刈り上げて、外国人風のくせ毛パーマをかけた、ベージュ色のヘア。
左耳にピアス。
服装も、カーキのミリタリーコートの中にはシンプルな黒Tシャツに、デニム。足元は、黒のマーチンブーツ。
まるで…アパレルの人?もしくは美容師?
この人、本当に陰陽師とやらなのですか…。