「また妖化!…やめろ!生き霊でも死霊でもない…妖怪になっちまったら、行き場が無くなるぞ!」
《あア…アぁ…アぁァアあぁっ!》
モヤの噴き出すと共に、なずなは、特撮ヒーローのように、俊敏にうしろに飛んで、間一髪回避していた。
叫んで呼び掛けるが、獰猛に動くモヤの柱に包まれた彼女は姿が見えなくなっている。
おぞましい悲鳴だけが、響いている…。
生き霊でも死霊でもない…。
妖怪…?
妖化とは、そういうことなのか?
妖怪になること…?
って、生き霊も死霊も妖怪もよくわからないが。
なずながさっきから『やめろ』と言っていることから。
それは、ダメなことなのだろう。
そんな認識でしかなかった。
…今は。
「おい!…やめろ!」
《…うガアあァぁァアぁーっ!!》
響き渡るその悲鳴だけが。
そして、黒いモヤが徐々に晴れてきて。
その姿が見えてきた。
(えっ…!)
その見てくれに、衝撃を与えられる。
息を止めてしまい、体に変に力が入ってしまった。
それはもう、この世のものではないぐらいの変貌だ。