なずなが、パンと手を叩く。



黒いモヤは完全に消え去る。

おぞましく崩れたバケモノ女性の姿は、先ほどお会いした人間のカタチをした女性となり、その姿を顕にした。




《うっ…ううぅぅっ…》




女性は、涙を流している。

顔を歪ませ、まさに慟哭だ。




「…少しは、落ち着いたか。っていうワケでもないか…」




ふぅ…と、一息ついて手を下ろす。

涙を流し続ける彼女へと足を向ける。

その彼女は、弱々しく小声で呟いた。



《…私と一緒じゃなきゃ…嫌よ…》



「………」



ある程度の距離まで歩いて立ち止まる。

彼女の様子を見守っているようだ。




《…あなたしか、見てないのよ…》

「…あなたって、誰?」

《…私の愛しい、しろ…あぁぁっ!…ああぁぁぁぁっ!!ああぁぁぁぁっ!!》

「…何っ!」




彼女が何かを言いかけた、その時。



突如として間欠泉のように、地面から黒いモヤが再び、勢いよく噴き出した。

それは、いくつもの柱のようになり。

先ほどの倍以上で再び、彼女を包み込んでいる。



…え?!

落ち着いたと思ったのに?!



《あ、あアぁぁァアあぁっ!》



彼女のおぞましい悲鳴も、再び響いていた。