「ひょっとして…その『誰か』が、わからないのか…?」
《ウ、うルさイ!ウるサイ!…黙れ黙レ黙れェーっ!!》
女性の表情が怒って…ると、思う。
顔全体がビキビキと震えており、崩れかけの目がつり上がっている。
《…オオおォぉォォォぉっ!!》
怒りの遠吠えなのか、その耳障りな叫び声は、次第に地を震わせている。
まるで、震度の弱い地震だ。
すると、彼女の足元から、またあの黒いモヤが地から滲み出すように現れた。
そして…段々とそれは噴き出してきて、彼女を包み込もうとしている。
「…待て!妖化したら成仏出来なくなる!」
《ウがあぁァアあァぁーっ!!》
女性が、言葉にならず、もう叫んで叫びまくる。
その様子を見て、なずなは舌打ちした。
「ちっ!…自我を失ってきた!交渉なんてもう無理!」
胸元で手を合わせて、彼女から目を離さず。
「…取り敢えず落ち着かす!…言霊『鎮魂』」
息を整えていた。
「…群青の空・白銀の雲・金璽鳥の羽衣・冴緑の雫…」
すると、なずなの体から、対するように柔らかく白い光が…静かに放たれる。