しかし、さっき遭遇した時と、どこか違う。

服装、髪型は一緒だが…明らかに顔貌が違う。

崩れに崩れていて、もはや人の顔ではない。

そして、手だけ…手だけがなぜか大きい。



(…あっ!)



その手の爪に、ゾクッとさせられる。

長い長方形の角ばった、まさしく魔女の爪のような形をした、ピンクの爪。




それは…化学教室での一件で現れた、バケモノの手の爪と同じ…!



…じゃあ、あのバケモノの手の持ち主は。

この女…?!




「伶士」



なずながそっと、俺の前に差し出してくる。

目の前には、あのおてもと。

袋に入った割り箸だ。



え…これ?



「これ、持ってて」

「え…何で」

「これは私が作った簡易結界だ。一般人でも使えるようにしてある。これで多少の被害は防げるから」

…そういうことなのか。

しかし、何で割り箸なんだ。

もっとマシなものに出来なかったのか。




「なるべく胸元に当てて。そして、そこから動かないで。袋から出すなよ」

「あ、あぁ…」



首を傾げたまま、ぎこちなく返答する。

そして、なずなは俺の傍を離れ、女性の方へと一歩前に出た。