「いらっしゃいませー」
ドアを開けると、カウンターから高めの男性の声がした。
カウンターを覗き込むと、白シャツに黒いエプロン姿の男性が、こっちに笑顔を見せている。
「空いてる席へどうぞー」
「あ、あの…橘ですが…」
「…あ、橘さん!」
俺の一言でカウンターから出て来て、こっちにやってくる。
隣に並ぶと俺より身長がだいぶ低いことがわかるが、大人の男性だ。二十歳ぐらい。
大人だけど、笑顔が可愛い。
「奥です。どうぞー」
店員さんに案内された席は、一番奥の窓側の四人掛けの席。
ガラスのテーブルと、黒い革調のチェアが4つ向かい合わせに並んでいる。
そこにはすでに、一人の男性が椅子に腰かけてコーヒーを口にしていた。
窓の外の景色を見ている。
この人が、うちの顧問陰陽師…?
「菩提さん!橘さん、いらっしゃいました!」
店員さんが声をかけると、こっちに気付く。
「…ん、ありがとう咲哉」
「では、ごゆっくり」
そう言って、店員さんは俺にも一礼してカウンターに戻っていった。