「家着いたぞ。降りれるか?」



後部座席のドアは開いていて、なずなが顔を出すように覗き込んでいる。

「降りれる…」

そう呟いて、静かに車から降りる。

動くとフワッと眩暈がした。



「伶士さま、大丈夫ですか」

「…大丈夫」

「足元お気をつけ下さいませ」

忠晴は俺の荷物を持って先に家の中へと入っていった。



「…私達も中に入ろう。熱出てるし少し休んだ方が良い」

「熱…?」

そういえば、体がめちゃくちゃ熱い。

変な汗もかいてるし。

「きっと、アイツの妖気に触れたから…」

「妖気?」

背を向けたまま、なずなは頷く。

「たぶん、妖気…」

その背中はピリピリとしていた。



「伶士いぃぃっ!また襲われたのかあぁぁっ!」



玄関に入るなり、またこれだ。

親父…会社は?テレワークか?

この大声、眩暈する頭と体には一層キツイ。

無視して家に上がろうとするが、親父が立ちはだかってくる。

「…おい!無視するな!」

「うるせえ…」