『おかーさーん!おかーさーん!』
『あ、あぁっ!伶士!伶士!』
なぜか母さんは、泣きながら俺の方に走ってきて、両手広げて俺をギュッと抱き締めていた。
『伶士、どこ行ってたのもおぉぉ…』
『おかあさんもたのしいところいこうよ!』
『もう、よかったあぁぁ…』
何で母さんが泣いてるのか、さっぱりわからなくて。
変だなー?と思った。
母さんに抱き締められたまま、ふと振り返ると。
タクシーの傍では、俺と一緒にいた女性とおじさんが話をしている。
『…で?おたく何してんの?』
『…あ、あんた!あの人のボディガードね?!』
『そうですよー?』
…そういや。
いつからおじさんに会っていないんだろう。
「…伶士…伶士?」
(あ…)
肩を揺すられて、呼び掛けられて夢から醒める。
うっすらと開けた目から広がる世界は、お馴染みの光景、忠晴の車の中だった。
あれ…俺、寝てたのか?