その黒いモヤは、あまり良いものではない、物凄く不快なものだということを肌で感じる。
見ているこっちにも、ジリジリと…。
「妖化…してる?」
なずなが、ボソッと呟いた。
その表情は、驚愕の一言を表している。
「生き霊が妖化…?んなバカな…」
茫然してる様子だったが、すぐに我に返って頭をブンブンと振っている。
「…伶士、行くぞ!急げ」
「あ、ああ!」
なずなに手を引かれて立ち上がり、そのまま女性を置いてその場を後にしようとしたが。
《アあぁァぁぁァぁぁッ…!!》
女性の更なる悲鳴を耳にして、二人とも立ち止まってしまう。
もがいているその動作が、激しくなっていた。
「ちっ…呪の効を深く強めよ!急急如律令!不動縛!」
《ぎィやアぁァぁぁっ!!》
なずなが立てた二本指を女性にかざすと、彼女の動きが再度停まる。
おぞましく汚い悲鳴だけが、響いていた。
「…行くぞ!忠晴さん車そこに横付けしてくれてる!」
引き続き、なずなに手を引かれて走って逃げる。
おぞましく叫ぶ、バケモノの女性を残して。
《…ああアぁァぁぁっ!!》