直前までギリギリ差し迫っていたバケモノの女性が、急に体を揺らして動きを停める。
俺の目の前で間一髪、動けなくなっていた。
《…ギぁアっ!》
耳障りな悲鳴をあげて、動けずもがいているようだ。
「伶士!」
女の背後から、息をきらしてなずなが登場する。
直ぐ様こっちに駆け寄ってきた。
「大丈夫か?」
「…ああ、大丈夫」
そして、俺の安否を確認すると、バケモノ女性を睨み付ける。
女性は、見えない何かに動きを封じられているのか、苦しんでいるかのようにもがき続けていた。
《あアァぁっ!…邪魔シナいデ!邪魔しナイで!》
「…結界張ってる敷地出たところを待ち伏せなんざ、いい度胸してんじゃねえかよ…この腐れアマぁっ!」
《アぁァぁぁっ!!…》
「…はっ?!」
俺を背に庇っているなずなが、ハッとして一歩下がる。
女性の様子をじっと、見張っている。
《…あアぁァぁぁァァ……》
見える…俺にも見える。
女性の体を取り巻く、どす黒いモヤが。
ただの地面から、黒いモヤがどんどん噴き出していて。
それが呻く彼女を包み込んでいる。