だって、あんな冷酷非道な連中の掃き溜めのような学園を出たんだぜ?


…違う。

俺は、あの高校でサッカーがやりたくて学園を出たんだ。

決して、逃げたワケじゃ…。



…逃げた?




《ちょっとちょっと!橘くん、北桜辞めて公立受け直すって!》

《えー!ひょっとして、お兄さんに彼女取られたから、北桜にいられなくなったとか?ほら、あの宮内薫…》

《でも確かに同じ橘グループの人間なら、イケメンなだけの弟より、同じイケメンかつ開校して以来の成績優秀者な兄の方に行くよねー?》




俺は、逃げた…のか?




ハッと我に返って、目の前の暗闇を振り払うように顔を横に振る。

気が付いたら、息があがっていて、肩が上下に揺れていた。

額からは汗がつたっている。



な、何だ…?

何でこんなことを強く考えてしまったんだろう。

ゴリラ先輩の件、余程ショックだったんだろうか。

俺も、弱いな…。




今日はもう塩梅が悪い。

課題終わってるし、もう寝よう。

そう思って、電気を消して布団に入る。



(………)



だが、布団に入って、目を閉じても。

あの事が、頭から離れない。