不意に言われた言葉が、胸にグサリとくる。
それは、ゴリラ先輩から聞かされて気付いてしまい、引っ掛かっていた件だ。
…女の趣味が悪い件ではない。
俺…兄貴にされた事を。
他の誰かにしてしまった。
こんなにも自分が傷ついたのに。
なのに、なに食わぬ顔で、平気でそれを…。
(くそっ…)
「…え?何。ひょっとして傷付いちゃった?」
「………」
鈴代なずなはこっちを見ている。
きょとんとしてるのか、考えてることが読み取りづらい表情で。
ケンカ売ってんのか、心配されてるのかよくわからない。
「…いや」
「あ、そう」
「…そんなことより、おまえ。キャミソールとショートパンツっていう薄着でこの家の中歩くな。うちは男家族なんだぞ」
「えー。だって暑いし」
「…じゃあ一枚羽織れ!昨日着ていたピンクのあの、パーカーあるだろ!そんな格好してたら本当に兄貴に襲われるぞ!」
「はいはい」
そして、おまえ。
ノーブラだろう。
気付いてしまった…。