先生にお呼びだしされようなことは、本当に何もしてない。
…だが、心当たりはある。
この時間の職員室へのお呼びだし…。
(………)
「…ひょっとして、親父さん?」
瞳真くんが、みんなに聞こえないようにボソッと耳打ちしてくる。
無言でゆっくりと頷いた。
その反応を見て「おまえも大変だな」と呟かれる。
俺が電話に出ないから。
学校に電話をかけてきやがった。
あの親父…!
キャプテンに「ちょっと行ってきます」と、一言告げて、グランドを離れる。
(ったく…)
わざわざ学校に電話をかけてきやがるとわ。
前の金持ち学校と要領が違うんだっつーの。
いったい何用だ。
くだらない話だったら、電話即切りだ。
気持ちイライラしながら、正面玄関口へと向かう。
だが、正面玄関口に足を踏み入れると…。
『…だーかーら!…今日空いてんだろ?俺の相手してくれるのいつなんだよ!なずな!』
男子の荒げた声が響いていて、思わずそっちに気を取られる。
出入口すぐ傍で、男子生徒と女子生徒が向かい合っているようだった。