★★★








「今日はお帰りが早いですね。頼智さま」

「そうなんだよー!考えたら、明日の講義朝イチだったんだよー!せっかく女の子と飲みにいったのに、一件だけでお開き!残念だー」



足音大きく、声も高くなっていて大きい。

また酔っ払っているのか。



そう騒がしく忠晴とここに姿を現したのは、兄貴。

大学二年生の兄貴だ。

いつものごとく、お酒を飲んで帰ってきて。

顔が赤らんで陽気だ。



「誰だい、あれ」


すっぴんの鈴代なずなが、いつの間にか俺の隣にいて、姿を現した人物について聞いてくる。

もちろん初対面か。


「…兄貴」

「ふーん。伶士お坊っちゃま、兄ちゃんいたの」

「だから、お坊っちゃまって言うな!」

そのしつこさにカッとしてしまう。

しかし、鈴代なずなはそんな俺には構わずスマホをいじって見ていた。

「…あー。ホントだ。橘家の長男、橘頼智(らいち)。北桜学園大学…建築学科の二年生。ホントだホントだ。剣軌から貰った資料に書いてあった」

「………」

資料…スマホで?

陰陽師、ペーパーレスなのか?