「橘くん、いつもありがとう!…でも、そろそろみんな揃ってきたから、後は私達がやるよー」
「じゃあこれだけ持って行きます」
すぐに使う道具を入れた箱を持って、倉庫を離れ集合場所に向かった。
「おーい、一年。マネージャーの仕事取るなよ」
「…わっ!」
後ろから急に話し掛けられて、驚いてしまった。
慌てて振り返ると、お馴染みのポーカーフェイス顔がいた。
「瞳真くん…じゃなかった。水口先輩」
「二人ん時は別にいーよ。それより、おまえが手を出したら一年のマネが仕事を覚えられないだろ」
「あ…」
傍には一年の女子マネの美森(みもり)が、あたふたしながらこっちを伺っている。
「でしょ」
「は、はい!…」
「じゃ、行こ」
ごめん…と、美森にさほど重くない箱を手渡して、先輩の後を追う。
その背中は頼もしい。
彼、瞳真くんは先輩…ではあるが。
それと同時に、俺にとっては幼なじみ。
親父の高校時代の親友のお子さんで、小さな頃はおじさんと一緒にしょっちゅう遊びに来てくれた。
小学校入学前は、ほぼ毎週末。
四つ上の兄貴に相手にされなかった俺は、彼が遊びに来てくれると、嬉しかった。