何かが起きる予感がしていたわけじゃない。

何かが変わることを期待していた。

何の努力もせずに。

薄々分かっていた。

何も変わらないってこと。

それでもいつか、いつかは。

ハタチになる前

「ハタチを過ぎると変わるぞ~」

と教える奴がいた。

25歳になる前

「アラサーは今までとは違うぞ~」

と言った奴がいた。

だけど

何も変わらない。

俺はいつまでも

いつまでも

「…そんなはずない」

荒れたベッドから飛び起きて

ダウンだけ羽織り

ポケットに手を突っ込んで

財布が入っているのを確認し

もう一つの手で携帯を握りしめ

「ともくんのへや」

俺は自分の名前が書かれた扉を勢いよく開けて

玄関へ急ぎ

「一緒に飲もうよ」と誘ってくるトドのような容姿の母親を横目に

俺は家を飛び出した。