「ありがとう。全国には行けなかったけど、とってもいい経験になったわ」
コンクールの大舞台でたくさんの照明をあびながら、演奏する沙理ちゃんの姿はカッコよかった。
私は素人だから詳しいことは分からないけど、本当に素晴らしい演奏だったと思う。
それでも結果としては全国には行けなかった。
そして3年生の最後の夏は終わり、3年生は涙ながらに引退した。
結果発表が終わった時の沙理ちゃん達の空気は声をかけられるものではなかった。
不用意な優しさは時に人を傷つけるからね。
彼女達にとって変な同情なんて余計に傷つくだけ。
「これからも、もっと頑張っていくわ。来年こそ全国の舞台に立ってみせる」
そう言う彼女の目には真剣で熱い炎が宿っていた。