「何言ってるの?天音の家族は僕でしょ?僕たちは結婚して夫婦になるんだから」

「違う。私のお父さんやお母さんに会わせて」

「それはダメ。外は怖いことばっかりなんだから……。天音はここで一生暮らす方が幸せなんだよ」

優しく触れられるその手が、声が、怖い。私は体を震わせ続けた。すると、北上さんは私を撫でるのをやめて立ち上がる。

「もうおやつの時間だから、おやつを持ってきてあげるね」

ああ、もう三時だったんだ。薄暗いこの部屋じゃ何もわからない。青空も、夕暮れの空も、星も、太陽も、二ヶ月近く見られてない。

「いい子にしててね?」

北上さんは私の頰にキスをし、部屋から出て行った。私は急いでドアノブに手をかけるけど、やっぱり鍵がかけられている。

どれくらい時間が経ったんだろう。ここに連れて来られてから、一秒さえとても長く感じる。ガチャリとドアが開き、「お待たせ」と北上さんがトレイを持って現れた。