そんな北上さんは、私を変わらず抱きしめている。未だにこの体温に慣れなくて、体が震えてしまう。嫌だ、こんな人の体温なんて、いらない!

「嫌っ!離して!」

私は抵抗するけど、拘束されていておまけに男性に抱きしめられているのだから、逃げられるはずがない。

「天音は照れやさんだなぁ。可愛いね」

拒絶と照れ隠しの違いもわからないのか、チュッと頭にキスを落とされる。この人は、私と相思相愛だと思い込んでる。絶対に私を逃すつもりはないらしい。

逃げようと今まで隙を探していたけど、北上さんは自宅でもできる仕事をしているらしく、昼間に脱出するというのは不可能だ。買い物などは私が眠っている間にしているらしい。一日中私のそばにいるため、逃げることができない。

「北上さん……」

「何?天音」

「家族に逢いたい……」

何度目になるかわからないこのお願いを言う。返ってくるのは同じ言葉だと知っていても、期待してしまうのだ。