「どうしたの?怖い夢でも見た?」

そう言って入って来るのは、中性的な顔立ちをした男性。私をここに監禁した張本人で、名前は確か……北上(きたがみ)さんだったと思う。誘拐犯の名前なんて、覚えていたくない。

私の気持ちは無視し、北上さんは私の隣に座る。そして、私の頭をそっと撫でて抱きしめた。私の口から悲鳴が漏れても北上さんは離そうとしない。

「大丈夫。僕がずっとそばにいるから。大好きだよ。天音(あまね)が死んでもずっと愛してあげるから……」

顔を上げれば、ニコリと北上さんは笑いかけてくる。でもその笑顔は、狂気的なものにしか見えない。彼はおかしい。狂っている。

誘拐された初日、彼は私のことを全て調べていたみたいで、私の家族の名前から住所、好きな食べ物や親友にしか話していない秘密までペラペラ喋ってきた。

「ストーカーじゃないですか!」

私がそう言えば、北上さんはキョトンと首を傾げて言う。

「好きな人のこと調べて何が悪いの?」