紗栄子と虎治は校舎二階の廊下で互いを殺すために集中して向き合っていた。
虎治と共に行動していた辰雄は紗栄子の槍の一撃で殺され、今では廊下にうつ伏せに倒れてピクリとも動かなかった。
でも、辰雄を殺した紗栄子も辰雄から左肩に金属バッドのフルスイングの一撃を受けて、左肩の骨が砕けていた。
(紗栄子は痛みを感じないのか?
辰雄の一撃をくらって、紗栄子の左肩は砕けている。
普通なら悶絶して廊下を転げ回っているはずなのに……)
紗栄子が脳の情報を移されただけのクローン人間だとしたら、紗栄子は痛みを感じるはずだし、ダメージを与えれば戦えなくなると思っていた。
それなのに、紗栄子の戦う意思は少しも衰えることなく虎治へと向いていた。
それは虎治にとって予想外のことだった。
『原島虎治。
私はお前を特別に憎んでいる。
お前があの日、私にしたことを許さない。
私はお前を殺せるこの瞬間を心から待っていた』
紗栄子の憎しみに満ちた目は真っ直ぐに虎治に向かい、復讐にすべてをかけている紗栄子の気持ちが伝わってくるようだった。
でも虎治はそんな紗栄子に少しも怯まず、紗栄子に向かってこう言った。
「お前がオレをどんなに憎もうがそんなことは関係ない。
お前がオレにどんな気持ちを持っていたとしても、お前はここで死ぬんだからな!」
虎治はそう言うと、バッドを上段に振りかぶって紗栄子に襲いかかった。
ケンカだけは誰にも負けない。
自分にそう言い聞かせて……。