佐伯一馬と田口祐子は生神亮治の研究所で、西条学園中学で行われているリベンジゲームをモニターで見ていた。



佐伯一馬は奇跡の科学者と呼ばれている生神亮治と働きたくて、大学を卒業するとすぐに生神の研究所で働き始めた。



そんな一馬が生神の研究所で見てきたのは、生神が様々な遺伝子操作を行って作り出した見たこともないような命の数々だ。



犬もネコもネズミも生神亮治の手にかかれば、恐ろしい怪物に姿を変える。



それはもう人間の業ではなくて、神の領域の出来事だ。



一馬はそんな素晴らしい実験の数々を見て、科学の力のすごさを知り、生神亮治の才能のすごさを知った。



そして一馬が生神の研究所に務め始めて十年目、生神はついに神を超える偉業を成し遂げた。



それは世界中のトップの科学者たちだけが真相を知る『少女A百人計画』である。



生神は百体のクローン人間に一人の少女の記憶を移し、百人の少女Aを作り出した。



そしてそんな生神の実験が成功して、百体の少女Aが生まれたとき、人類はついに不老不死の夢を叶えられると一馬は思った。



つまり人が治らない病気にかかったとしたら、その人の記憶を別の肉体に移し替えれば、また人は健康体を手に入れて、普通の生活が送れるのだ。



また人が老いたときも同様に、自分の記憶を若くて健康な肉体に移せば良い。



これで人類が死への恐怖に怯えることはなくなるのだ。



一馬をはじめ、生神亮治の科学者チームは皆がそう思っていた。



しかし、画期的で素晴らしい科学の進歩は、その裏で新たな問題を生み出した。



それは無限の命があるが故に起きた命の価値の下落であった。



百体の少女Aはクローン人間から生まれた人ではあるものの、彼女を純粋な人であると認める者は一人もいなかった。



少女Aが一人死んでも、どうせまた新たな少女Aは生み出せる。



非公開の実験で生まれてきた少女Aは、世の中で普通に生活させることができずに、新たな科学の実験材料として百体すべてが生神の研究所内に監禁された。



そして生神亮治は自分で作り出した百体の少女Aを使って、また新たな不死の実験を始めていた。