「行くぜ、辰雄。

悲鳴が聞こえてきた校舎の二階に」



虎治はそう言うと、手にしたバッドを肩に背負い、廊下の突き当たりにある階段へと歩き出した。



辰雄はそんな虎治のすぐ後ろを追って、暗い校舎の廊下を怯えながら歩いていた。



あそこにある階段を降りて二階に行けば、そこに紗栄子がいるだろう。



紗栄子はきっとためらいなく自分たちを殺しにくるが、自分はそんな紗栄子の顔面に迷いなくバッドをフルスイングできるだろうかと辰雄は思った。



辰雄は人を殴ったことはあるものの、本気で殴ったことは一度もない。



それなのに虎治は、リベンジゲームのクリア条件の一つに紗栄子を殺すことが入っているのを良いことに、紗栄子を殺す気満々で、その巨体から殺気を放っていた。



校舎の二階から聞こえてくる悲鳴は数人分の声が入り交じっていたが、やがてその悲鳴は聞こえなくなり、紗栄子に襲われたクラスメイトが全滅したことが虎治たちにも伝わってきた。



そんな状況の中で、辰雄は虎治が足を止めることを期待したが、虎治は少しもそんな様子を見せずに、ゆっくりと階段を降り始めた。