虎治と辰雄が校舎を歩いていると、校舎の二階から悲鳴が聞こえた。



それはこの校舎で誰かが紗栄子に襲われている合図だ。



虎治と辰雄は足を止めて、その悲鳴に耳を澄ました。



「聞いたか、辰雄。

校舎の二階に紗栄子がいるぜ。

これでやっと紗栄子に会える」



虎治はそう言ってニヤリと笑ったが、辰雄は紗栄子が近くにいると思うと、恐怖で顔がひきつっていた。



あのバケモノの紗栄子とまともに戦うなんて、普通なら考えられない。



自分たちは紗栄子が人を殺すところも見たし、学園の中で殺された生徒の死体も見ていた。



紗栄子に殺された生徒は誰もが血まみれで、顔面に槍を突き刺されて誰だかもわからない生徒もいた。



それなのに、虎治はどうして紗栄子と殺し合いをしようとするのか?



辰雄には虎治の狂った気持ちが理解できなかった。



「辰雄、校舎の二階に行こうぜ。

紗栄子を見つけて、ぶっ殺すんだ!」



辰雄はそう言った虎治を見上げ、心の中で虎治の言葉が嘘であることを願っていた。



自分はまだ死にたくない。



紗栄子との殺し合いなんてしたくない。



それが辰雄の本音だった。