「教室だとちゃんと話ができないかもしれないけど、私は紗栄子の味方だからね。

どんなことがあってもずっと……」



クラスでいじめにあっていた紗栄子だったが、唯一の友達、智恵が言ってくれたその言葉が何よりもうれしく、救いだった。



正直、晴江たちの嫌がらせは残酷なほどにひどく、心が折れそうになってしまう。



でも、そんな自分のつらい気持ちをちゃんと聞いてくれる友達がいる。



それが紗栄子の救いだった。



紗栄子は自分がクラスの最下位にいて、クラスのみんながその状況に満足していることを知っていた。



もう自分はこのポジションから抜け出せない。



紗栄子がそう思ってあきらめかけていたとき、紗栄子の目の前に蜘蛛の糸が下りてきた。



絶望の中にいた紗栄子に救いの手を差し伸べてきたのは、クラスで一番危険な人物、原島虎治だ。



紗栄子は元々、虎治のように暴力に訴えるような人間は苦手だったが、今の絶望的な状況の中で声をかけてきてくれた虎治が紗栄子には神に見えた。



紗栄子は自分を救うことができるのは虎治だけだと信じ、虎治の言葉を真剣に聞いていた。



「紗栄子、いじめられててつらいか?

でも、安心しろ。

オレがお前を救ってやる。

今日の放課後、オレたちに付き合え。

誰も来ない場所がいい。

午後5時に山岳部の部室で待ってるからよ」



絶望の中にいた紗栄子に希望の光が差し込んだ瞬間だった。



これで自分はいじめの地獄から抜け出せるかもしれない。



紗栄子はそう思い、希望で胸がふくらんでいた。