素野博。甲斐田志篤。
それぞれのプロフィールはそれなりに把握できた。
それだけだった。
「いくら調べても、あんたたちの関係性は何もわからなかった」
薫は悔しそうに下唇を噛んだ。
博くんとユキにはつながりがない。
年齢、学校、町内……
どこにも共通点が見つからない。
遠い親戚かと疑ったが、ハズレだった。
きっと正解は2人にしかわからない。
「個人のことは知れたけど、それじゃあ意味がない。もしかしたらうちの総長をだまそうとしてるかもしれない。双雷の情報を売ろうとしてるかもしれない。こんな状況でぬけぬけと怪しい取引なんか……」
「す、ストップ!!」
あわてて薫の口を両手でふさいだ。
やっと俺もさえぎれた。
やってやったぜ。
「勝手に断ろうとするなよな」
「でもキユー!」
「これは交換条件だろ? 2人が協力してくれたのに、何も礼をしないわけにはいかないよ」
口から離した手で、額を小突いてやった。
2人がどういう関係だろうと、俺に助けを求めてるのは事実だろ?
無下にはできないよ。
「俺はちゃんと恩を返したい」
「お兄さんならそう言ってくださると信じてました」
博くんの言う「協力」は「利用」の意味なのかもしれない。
それでもいいよ。
借りを返せるなら。
俺は喜んで利用される。