と、突然、姫莉ちゃんは俺のことを押し返した。
荒い息、赤く熱った頬と、涙の浮かんだ熱っぽい視線。
気づいたら姫莉ちゃんの服はめくれていて、無意識に色々してしまっていたらしい。
「き、今日はそーゆーの、できない日だから……。
場所も、場所…だし」
姫莉ちゃんは視線を逸らして、つーっと涙を流した。
……こーゆーことしようとして泣かれたのが初めてでどうしてあげればいいかわかんない。
とにかく俺は姫莉ちゃんを引き起こしてギュッと抱きしめる。
「ごめんね、急にこんなことしちゃ怖かったよね?
泣かないで、ごめんね」
「…っ、ち、違くて……その、毎日いろんな子とシてたのに、今はシてないからゆみくんがそーゆーこと、したいのは、わかるし……私もできればしてあげたいんだけど…。
女の子、来てまして…」
ズズッと鼻をすする姫莉ちゃん。
どうやら怖かったから泣いてるっていうのではないみたい。
「そ、そんなことで謝らないで、大丈夫だから〜…。
姫莉ちゃんができるときにヤればいいからさ、そんな気にしないで?」
「うん……」
しゅんと俺の服で涙を拭く姫莉ちゃん。
俺の胸の中に収まってしまうっていうのもまた、俺を煽ってくる。……ダメ。
「姫莉ちゃん、いつも何時に寝てる?」
「3時」
驚愕だった。よくそれでこの綺麗な肌を保てるよね、怖いよ。
「今日はちょっと早く寝よっか」
「うん」
と、姫莉ちゃんは俺のベッドにしれっと入っていく。
俺もその隣に入って、部屋を暗くする。
「……ゆみくん、いい匂いだね」
ぎゅーっと抱きついてきて、俺を見つめているのが薄暗い中でもわかる。
「姫莉ちゃんもいい匂いだよ。甘い匂い」
俺は姫莉ちゃんの指についたリングに触れる。
「姫莉ちゃんはずーっと俺のだよ」
「うん」
「好きだよ、姫莉ちゃん」
「私も、ゆみくんのこと好きだよ?」
変わっちゃったよ、俺も。
ちゃんと責任とってね、姫莉ちゃん。
俺はチュッとキスをして目を閉じた。
─── Fin
はい、毎度毎度、終わらせ方がいまいちヘタクソな作者です、精進します。
あとがきを幕間にするこの変なシステムを笑わないでください…笑
今回、チャラチャラな男の子が一途に1人の女の子を追いかけ続けるお話を書いてみました。
最初から最後まで誰もキャラが安定しないという大惨事。反省です。
作者の書き物は流し読みがベストだと思うんですよね、隠しきれない粗に気付かないように読んで欲しい所存です…(^ω^;)
えー、作者、極度のめんどくさがりなんですね。
いっぱい書いてるんですよ、これでも。
スマホの中には大量のお話データがあったりします。
まぁ、とんでもない駄作が混ざってたりしますが…。
ただ、それをアップするための編集作業がこの上なく嫌いでして……。
たまに気が向いたらサイト開いてアップ、みたいなノリで書いてるんですね。
書いたなら載せやんかーい、みたいな気持ちでいます、自分でも。
催促してください!!
やればできる子なんです私も!!!
やば、怒られるっ!って気持ちでアップします!!
えー、最後の小話。
あのですね、最近あるお話の続編を書こうと思案しております。
が、残念ながらいい案は浮かびません、書いてから時間経ってるお話なので……。
ゆっくりお待ちいただければなぁと、思ったり思わなかったり。
ここまで、無駄に長ったらしいあとがきを読んでくださりありがとうございます。
次のページをめくっていただくと番外編が…。
そちらの方もぜひ。
最後までありがとうございました。
2020年2月2日
日本史の模試の過去問を目の前にスマホを触る作者
*ゆきうさぎ*
喫茶店、窓際の席。
俺は両耳に白いイヤホンをつけて、課題を開いていた。
模試の過去問。謎に提出な感じが腹立たしい。
10分…遅刻。
遅い。
あれだけ早く準備しろって言ってやったのに。
カランコロン、と柔らかいベルの音が鳴る。
入り口の方を見ると10分遅れの彼女。
「八雲くん」
にっこりと俺に笑いかけるあや。
俺はイヤホンを外して、課題を閉じる。
イヤホンのコードをスマホから抜くと、鞄に突っ込んだ。
「遅い」
「ごめんね、割と焦ったんだけど、時間が待ってくれなかったの」
不親切だよね〜と、俺の正面に座るあや。
遅れたことに関しては、もういつも通りすぎて悪びれもない。
「課題?大変だねー?」
俺がしまおうとするノートを見ながら、あやはねー、課題学校に置いてきちゃったんだよね〜、と笑う。
ちゃらんぽらん。
本当に、こんな頭悪そうなのに、めちゃくちゃ頭いい名門の女子校に通ってんだから世話ない。
「今日は何がそんなに時間かかった?」
「んー…服選ぶのとー、メイクするのとー、あとはね、起きるの」
確実に最後のじゃん。
「今度からモーニングコールしようか」
「えっだめ。声がゴミだから」
真顔でそういうあや。
篠田彩香(しのだあやか)。
付き合い始めて10ヶ月経った俺の彼女。
俺の新記録。
身長は平均くらい。顔もそこそこ…いや、普通にいいか。
頭はいいけど運動は心配になるくらいできない。
走ったらこけるし、歩いてても躓くし、バレーボールは顔面に受けるし、バスケしたら突き指するし。
テニスラケット振ったら、勢い余って自分の膝殴ったって聞いた時は、本気で心配した。
出会いはなんてことない。
中学の時の予備校が同じだっただけ。
まぁ、鈍臭いからさ、帰ろうとしてた俺が廊下歩いてたら、教材を大量に持ったあやが元からそうなるつもりだったみたいに滑らかに転けて、教材ぶちまけて。
それを拾ったあたりから会うたびに話すようになったって、ただそれだけ。
コクってきたのはあや。
俺はいつものノリでオッケーしたつもりだったんだけど、まぁ気づいたら10ヶ月。
……割と楽しんでしまってる。
「電車の時間は?」
「あと30分」
「あれ、長いね?」
「あやが遅れたからな」
「あ、ごめん」
いや、別に。元から計算済みだったし。
なんなら今日は早くきた方だから、段取り悪いみたいになってるけどさ。
「あっ、八雲くん、今日の服どう?」
あやは無邪気に立ち上がってくるっと回る。
「スカートじゃないところがマイナス」
「えぇっ」
「でも似合ってるから別にいいんじゃない?」
意地でもスカートを履かないあやの今日の服装は、紺のサロペットにくすんだピンクのパーカー。
ウエストの細さが目立つ。
足元は底の厚い黒のスニーカー。
黒い長い髪はポニーテール。
デートって言っても絶対にカジュアルに決めてくるのがあや。
あやの学校の制服はどんな物好きが決めたのか、ロリータ系の薄い茶色のワンピース型。
ウエスト絞まってて太ったらモロだし、スカート丈は膝上7センチって決まってるし、ローファーの色も茶色と固定されている。
残念ながらスニーカーでの通学は認められていない。
髪ゴムまで指定されてるのがまた気持ち悪い。
ちなみに全寮制。スマホ持ち込みはOKだけど、外出は制限付き。
まぁ、あやはほとんどないようなものだけども。
頭が全ての学校だから。
そんなこんなで、あやは普段スカートを履くのを好まない。
一応、スカートを見たいのは俺としてはあるけれど、そこを強制するつもりはないから、可愛ければなんだっていい。
……可愛いから今日もいい。
「でしょー、似合ってるでしょー?
何せあやだからねっ」
自意識過剰な感じも割と可愛いと思ってしまっている。
……というかカジュアルが似合わない人なんてあんまりいない。
「あ、あのね、こないだメイド喫茶行ったのね」
あやは座り直して嬉しそうに笑う。
……なんで?
「それでさ」
「ごめん、なんでか聞いていい?」
「ん?萌え萌えキュンキュンしたかったから」
真顔で言われた。
どうしよう、俺にはわからない。
とにかくあやの機嫌がいいならとりあえずは当たり前のことだと思って、スルーしよう。とりあえず。
「うん、続けて?」
「そしたらね、ちっちゃい子、本当ちっちゃい子だよ?145センチくらいの女の子がね、縦巻きロールでねツインテールで、すっごい可愛かったのね。
だからね、お名前聞いていいですか?って聞いたら、ちょっと困った顔されてね、私の耳元でお名前教えてくれたの!
めっちゃ可愛かったの!え、凄かったよ?
そのあとね、ナイショですよ?って!
しーって人差し指!」
萌え萌えキュンキュンしちゃったよー、すごかったよ
ー、というあや。
すごいのはあやの早口だと思う。
俺はコーヒーに口をつける。
「姫莉ちゃんって言うんだって」
「ぶっ」
吹いた。
「えっ、八雲くん、汚い」
「あやのせい」
姫莉、って、あれだよな?芦名だよな?
芦名以外に姫莉って名前聞いたことないんだけど。
姫莉って珍しい名前だよな?
うわぁ、あの子バイトしてんだ?
堂々と良くやったものだよ。
……今度、弓弦脅して昼奢らせよう。
俺は机の上をナプキンで拭く。申し訳ない。
「あ、でね、その子前の日に誕生日だったみたいで、いろんなお客さんからプレゼントもらってたからね、私も便乗して連絡先渡したの〜」
「……あや、今後それ禁止な」
なんちゅうことしてんだこいつ。
相手が芦名(だと思いたい)だったからよかったもののさ、これが誰かわかんない変なやつだったらほんと……怖。
「えーっ、なんで〜?めちゃくちゃ可愛かったよ?」
「なんでも。
次それやったらその携帯叩き割るからな?」
「うっ…それはやだから我慢します」
「お願いします」
あやはむすーっとした顔で俺を見る。
俺はそれを無視して、立ち上がった。
「金払ってくるから先出てて。
間違っても1人で歩き出すなよ?」
「それはフリ?」
「フリじゃない。
1人で歩いてて転けられたら困るから言ってんの」
俺は会計を済ませると、カランコロンとベルがなるドアを出た。
スマホを片手に空を見上げているあや。
「なんかあった?」
「んーん、雲がなかった」
いつもと同じでちょっと安心した。
俺はあやの手を引いて歩き出す。