試合中、ずっと考えていた。あたしは誰が好きなのか、あたしは春哉と優也…どちらが本当に好きなのか。

だから、試合はあまり見ていなかった。途中まで。

「考えるのは後にして、今は試合楽しもう?」という奈美の言葉を聞いて、少し安心した。そして、試合を見る事にした。
すると、優也がバッターボックスに立った。

「あのピッチャー…さっき三振ばっかとってたよ…。 優也、本当にホームラン打てるのかなぁ?」
奈美が、眉をしかめ、ちょっぴり心配そうに言った。
そんなの、無理じゃん。
だって、優也まだ一年だし…さっき打ったのって…キャプテンでしょ…?
キャプテンも打てなかった球を、優也は打とうとしている。

バッターボックスの端で、優也はバットを何回か回し、こちらを見た。

ドキッ────…
目が…合った。
遠くからでも、分かるよ。
目が合っている事くらい。
すると、優也はバットの先をあたし達の方に向け、口をパクパクして、何かを言っている。

み…

みと?

あっ…!分かった。



──…見とけよ。…────

多分だけど、そう言った気がした。それに、優也は笑っている。
顔がまた、熱くなった。
でも、またその隣で春哉が大きく手を振っている。
そして、また胸が高まった。
あたしは、優也から目を反らし、春哉に大きく手を振った。

良かった…。
2人共怒っては…ないよね。