あたしは一瞬、何を言われたか理解出来なかった。
やっと理解して、「え…」と声が漏れた時には優也はそこにいなかった。
他の選手がいる所に向かって歩いていく後ろ姿だけが見えていた。
また…顔が熱い…。
あたしは頬に手を当てて、その後ろ姿をぼっー…と見ていた。
優也にとっては、ただ、友達にいいところを見せたくて言っただけかもしれない。ただ、かっこつけて言ってみただけかもしれない。
春哉に期待していたその言葉を優也に言われたあたしには…どう受け取ればいいか分からなかった。
けど、ちょっとだけ…ドキドキした。好きな人に言われたみたいに嬉しかった。
あたしが下を俯いていると、奈美が変な事を言った。
「何、今の!? 優也って優の事好きだったんだぁ!」
『っ…。 違うよ! かっこつけたかっただけだって!!』
違う。
絶対違うよ…。
「…俺行くわ。」
春哉は、顔を見せないように下を向いて、手で頭を掻きながら歩いていった。
何なの?春哉も優也も…今日何かおかしいよ。
怒ってるのかな…。
あたし…何かしちゃったのかな。
でも、何故か顔がにやける。自分がおかしい。
優也に“お前のためにホームラン打つから。”って言われた事が…。
顔がにやけるくらい嬉しい…。
あたし、やっぱおかしい。
だって────…
春哉に“お前のためにホームラン打つから。”って言われるよりも…多分、
優也に“お前のためにホームラン打つから。”って言われた方が嬉しいんだ。
あたし…どうしちゃったの?