『いよいよ…明日。』
あたしは、少し大きめのお母さんのエプロンを着て、腕を捲り上げて呟いた。
春哉の野球の試合は、いよいよ明日。差し入れに何を持っていくか、ずいぶん悩んだけれど、結局…レモンの蜂蜜漬けにした。
料理は、普段全然しないし、お弁当は無理だな、ってちゃんと考えて出した結論。レモンの蜂蜜漬けだったら、簡単そうだし、一応本もあるし!
「なーに? あんた彼氏に何か作るの?」
お母さんがニヤニヤと嫌な笑い方をしながら、言った。
『違うよ! ていうか、もう12時だよ! おやすみ!!』
あたしは母の背中を押し、無理矢理寝室に入れた。
よし…。
作るぞー!
まず、レモンを洗い、包丁で切る。
う゛…。普段包丁を使わないから、綺麗に切れないな…。
すると、いきなり。
ザクッ───…
変な音がした。
…と思ったら、いきなり指に激痛が走った。
『っ…たぁぁーー!!』
ぅああぁぁ…。
この大量の血は…異常だ…。そう思ったら、手が震えてきた。
痛過ぎる。
その後、切り傷を増やしながら、朝の二時になるまで頑張った結果、やっとの思いでレモンの蜂蜜漬け?ができた。あとは、冷蔵庫で冷やすだけだ…。
でも、名前の後にハテナ?がつくほど下手だった。
お世辞でも、上手だとは絶対に言えない。
これを渡せというのか…。
この下手くそなレモンの蜂蜜漬けを。このレモンのクズを…。
この時ばかりは、自分の料理の下手さを呪った。