もう頑張って作ってきたチョコレートケーキなんて渡さないし、一生話さない。
どうせ、すぐクラス替えがあるから…。
そのバレンタインデーは、1人で帰る事になった。
皐月はさっき、先輩にチョコを渡しに行った。
“振られてもいいから、ちゃんと自分の気持ち伝えてくる!”ってカッコいい事言って、智樹先輩の所へ行った。
奈美は、さっき颯馬にチョコを渡していた。
どうなったかは、またメールをしてくれるらしいから、聞くのが楽しみだな。
夏奈子は、委員会。
寂しいなぁ。
1人で帰るの久しぶり。
空を見ながら自転車を漕いでいると、春哉の家が見えてきた。
あっ!春哉!
っと思ったその時だった…。
ガクッ────…
『きゃー!?』
ガシャン、
溝に自転車のタイヤがはまってしまった…。
ハズカシっ…ていうか、
『いったーい!!』
う…涙出てきた…。
下を向いた。すると、あたしの上に大きな影が。
ふと上を見ると、息を切らした春哉が頭の上からあたしの顔を覗き込んだ。
ドキッ!
『ぅあ!春哉!!?』
「お前何転んで…てか泣いてんじゃん…。」
『だって…。』
もうすべて言ってしまおうか…なんだかどうでも良くなってきた。
『だっ…て、春哉と…一生話せなく…な…るっ…ぅ あたし…嫌…だ…からぁ…』
あれ?
それは言わなくても…。
ダメだ…。 止まらないっ。口が勝手に…。
『結那にぃ…春哉と両…思いにな…れなかったら…一生春哉と話すな…って… 嫌だ…ぁ…。春哉…。』
あぁ…
もうダメ…。自分で自分が抑えられない。なんかチクっちゃったし…。
あたしこの頃、よく泣くなぁ。今まで映画とかでしか泣かなかったのに…。春哉のせいだよ。
「…結那に言われたのか。俺と一生話すなって…。」
春哉はそう言いながら、あたしの手を握り、立たせてくれた。
それに、自転車も起こしてくれた。
こういう、たまに優しい所とか…。好きなんだな。あたし…。また、春哉はあたしを迷わせるね。せっかく諦めようとしたら…また優しくする。そして、また諦めようとしたら…優しくする。
ある意味酷いよねっ?