あたしは…。
この時逃げてしまったんだ。
あまりの苦しみに…
あまりの悲しみに─────…
でも、この時逃げなければ…
この時ちゃんと向き合っていれば……
周りの人を傷付けずに済んだのかもしれない…
大切な人を傷付けずに済んだのかもしれない………。
この時以上の苦しみと悲しみを感じる事は無かったのかもしれない────…
あたしは、下を向いて唇を噛み締めた。
そして───…
『あたしも颯馬の事好きだったんだ!』
…なんて嘘をついてしまった。
その時、そっぽを向いていた颯馬の顔がぱっ、と輝いた。
ズキッ─────…
罪悪感。
「マジで!?俺でいいの!?」
胸が痛む。
ゆっくりなリズムで…
ズキッ
ズキッ─────…
『うん…。』
また嘘……。
ごめんね。
でも、この時のあたしは弱くて─────…
こうする事しか出来なかったんだ─────…