あたしはまた、逃げてしまった。

楽な方に行ってしまった。

自分が楽になりたいだけだった。

そのために、人を傷付けた。

それで、救われると思ったから。

でも、それでも苦しかった。

楽になりたいがために人を傷付けたけれど、

無駄だった。

そしてまた、

その傷を癒すために誰かを犠牲にし、逃げ道を切り開く。

そして、また傷付け、傷付く。

その繰り返し─────…



あたしは、放課後優也を屋上に呼び出した。

今日はいつもより、寒くて、心が冷たかった。

ダンダンダン────…
『来た…。』
階段がある方から音がしたから、すぐに優也だって分かった。

扉が嫌な音を立てて開いた時、あたしは大きく息を吸い、叫んだ。


『あたしも優也が好きになりましたぁー!! 春哉の事は忘れますっ!!! あたしと付き合って下さーい!!』
「…っえ?」

驚いた顔をし、気の抜けた声を漏らした優也は黙ってそこにつったっている。